序章 悲劇の前触れ

「がんばって来いよ!」

そう進路指導の先生に肩を叩かれ送り出された。今日はこれからの人生を決めかねないセンター試験二日目である。理数系の学部への進学を希望する自分にとって、絶対落とすことのできない日である。
しかし、理科は1科目しか受けないので控室にこもり勉強するつもりでいた。第1解答が始まると、控室は沈黙に包まれた。
神が巣食っているような、神秘的な空間にいた。たまに歩く私の靴音と、飲みさしの缶ジュースを机の上に置くときの音のみが聞こえるのみであった。